減磁について

時間: 2020-04-01
概要: 永久磁石は、じつは永久ではないです。 磁石は、使っている間に磁力が変化してしまうことがあります。 磁力が自然に増える、ということはまずめったになく、反対に磁力が減ってしまうことは茶飯事にあります。磁力が減ってしまう現象を減磁するといいます。
磁石は、使っている間に磁力が変化してしまうことがあります。
磁力が自然に増える、ということはまずめったになく、反対に磁力が減ってしまうことは茶飯事にあります。磁力が減ってしまう現象を減磁するといいます。

減磁は「外部」「自己」「温度」の3つの影響があり得ます。つまり永久磁石は必ずしも「永久」であり続けるとは限りません。「外部減磁」「自己減磁」「温度減磁」によって磁石でなくなってしまうことがあるのです。減磁を含む磁力の変化には、可逆変化と不可逆変化があります。温度変化を例に考えてみると、室温から温度変化をさせると、磁力が変わります。もとの温度に戻した時、磁力が元に戻る場合が可逆変化(可逆減磁)、戻らない場合が不可逆変化(不可逆減磁)になります。

外部減磁

磁石は外部から印加される磁界の影響を受けて減磁が発生することがあります。磁石同士を反発させるだけで発生してしまう場合もあります。特に保磁力の小さい磁石では現れやすい現象ですので、使用途から予測してあらかじめ保磁力の高い材質を選定するなどの検討が必要になります。

1.マグネットに軟鉄片を近づけた場合
磁石に軟鉄片を近づけるとマグネットの磁力が変化します。これはマグネットによって磁化された軟鉄が外部に磁界を作るためで、この磁界はマグネットの磁化を強くする方向に働きます。この動作を減磁曲線上で解析すると軟鉄の位置によってマグネットのパーミアンス係数が変化し、磁石に軟鉄片を近づけると,空隙の長さが減ることによりパーミアンス係数は大きくなりIからIIへと変化します。

この時、動作点は左図のP1から減磁曲線とは別の経路に沿ってP2点へ達します。この経路P1-Bpは直線で近似することができリコイル線と呼ばれます。この直線の勾配μr=(Bp-B1)/H1をリコイル透磁率と呼びます。μrは材料定数で、この勾配は 概ねBr点における減磁曲線の接線に近い傾きとなります。

動作点がP1からP2へ移動すると磁束密度がB1からB2へと増加することになります。

このように軟鉄等が磁石の近くにあることより磁力が変化しますので磁力の測定・評価方法には注意が必要です。



2.マグネットに逆磁界が加わった場合

着磁されたマグネットに逆向きの外部磁界が加わった場合、磁束密度が変化し減磁することが考えられます。この時の動作も減磁曲線上で解析することができます。逆磁界の影響を検討するためには、磁石固有の磁化の強さを示すJ-H曲線を利用します。
ある磁石のB-H曲線上の動作点が①です。
この時にJ-H曲線上まで伸ばした①の垂線とJ-H曲線の交点を①’とします。
①’と原点0を結んだ直線を直線①’0とします。
ここに逆磁界をかけると、直線①’0が逆磁界分だけ平行移動します。
逆磁界をかけた時の①’のJ-H上の移動点を②’とします。
②’点の垂線とB-H曲線の交差する点を②とします。
ここで逆磁界をなくし、元に戻そうとすると②点はリコイル線上を移動し、動作線にぶつかります。
この①と③の磁束密度の差が、外部磁界による減磁として表れます。

この減磁が可逆減磁なのか不可逆減磁なのかは、J-H曲線の屈曲点を通過するかどうかによります。図示の例では、屈曲点を超えてしまっていますので、不可逆減磁となります。
逆磁界の平行移動が、JH曲線の屈曲点を超えなければ、不可逆ではなく可逆減磁となり、磁力も元に戻ります。



自己減磁

磁石本体の次第に減衰してゆく磁力自己減磁と言うものがあります。自己減磁とは磁石極面から磁石内部に発生する磁界の影響で起こる減磁です。自己減磁は磁石の形状、寸法比に依存します。
磁化された磁石は、表面に生じる磁界はN極からS極へ向かいますが、磁石内部では磁化の方向とは逆向きにHdになる磁界が働きます。
この内部の磁場を減磁界といい、磁石を減磁させる方向に働きます。この減磁界は磁石の寸法比により異なり、磁化方向に細長い磁石ほど小さくなります。



温度減磁
磁石の磁気特性は温度により変化します。
ネオジム磁石の場合もフェライト磁石の場合も、不可逆減磁を避けるために動作点が屈曲点以下に落ちないように磁石を設計する必要があります。

1.高温減磁
ネオジムなどの希土類磁石の場合、温度変化が大きい、特に高温側では減磁が発生します。ネオジム磁石を含む希土類磁石は、高温になる程、Br、Hcb、Hcjが低下します。これを負の温度係数があると言います。
高温不可逆減磁は残留磁束密度Brではなく保磁力Hcbに依存します。この不可逆減磁が起こると、磁石の磁力は低下したまま元に戻らないため、設計上、注意が必要です。

2.低温減磁
ネオジム磁石は高温で不可逆減磁を起こし易いですが、フェライト磁石の場合は傾向が異なります。
異方性フェライトマグネットは、パーミアンス係数が高くない場合、着磁したものを-40℃付近の低温に冷却すると再び常温に戻した時に大きな減磁を示します。